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CM通信 2007年4月9日
"重力に抗うクルマ/既成概念に抗うアイデア"
広告キャンペーン「シトロエンC6/異次元へ。」
クリエイティブエージェンシー:ビーコンコミュニケーションズ


シトロエンジャポンはこのほど、「シトロエンC6」(以下、C6)の新しい広告キャンペーンをスタートした。「C6」は、昨年10月に新規導入モデルとして国内発 表された新車種で、シトロエンのフラッグシップモデル。 広告キャンペーンのメインコピーは「異次元へ。」。そして、目を引くのはまるでSFにでも登場する未来カーのようなタイヤの無い「C6」をモチーフとした ビジュアル。同車種の卓越した乗り心地が体感的に伝わるコミュニケーションが施されている。シトロエンファンを中心に、これまでシトロエンを知らなかっ た層も巻き込んで、BlogやSNSなどで「タイヤのないクルマ」が描かれた広告が話題を集めている。 この「C6」の日本国内における広告キャンペーンのクリエイティブエージェンシーはビーコン コミュニケーションズ(以下、ビーコン)。同キャンペーンは、 新聞広告(全国紙)・Web・雑誌広告・チラシ・DM等で順次展開され、同車種の優れた"乗り心地"の訴求と、シトロエンブランドの認知向上が図られている。さら に、今回の広告展開を皮切りに、シトロエン・ジャポンのブランドスローガンを「すべてが芸術」に一新した。 <「C6」のキャンペーンでは、思い切ったアイデアによるインパクトと、同車種が持つ優れた乗り心地を訴求することがテーマでした。クリエイティブやア カウントなども含めたチームワークが今回とてもうまく奏功しました>と話すクリエイティブディレクターを務めたビーコンの今井康仁氏と、アカウントの宇 田川直氏に話を聞いた。

独創の乗り心地をコミュニケーションの軸に
ビーコンの戦略チームは、シトロエンが1955年に発表した車種「DS」から数えて4代目に当たる「C6」の持つUSPの中から、ずっと受け継がれてきた"伝統"の油圧サスペンション(新ハイドロニューマティック・アクティブサスペンション)に着目。それによって生み出されるシトロエン独特の優れた乗り心地をコミ ュニケーションの軸に、キャンペーンを展開していくことを基本指針とした。

今井氏:1955年発売の「DS」を1代目に、フラッグシップの3代目である「XM」が今から十数年前に発売されました。つまり、その間フラッグシップのフルモデ ルチェンジがなかったことになり、「C6」デビューの期待感は消費者の間で非常に高まっていました。その意味でも、とにかくインパクトを伴ったコミュニケ ーションが求められてきました。「乗り心地」をしっかりと訴求しつつ、日本市場におけるブランド認知の向上を、「C6」の"鮮烈なデビュー"をキッカケに図 っていく。それが今回のクリエイティブのミッションでした。 欧州などに比べると日本国内ではまだまだシトロエンというブランドの浸透の余地がある。そういった市場に向けて、どんなコミュニケーションを展開してい くのかが相応しいのか…。まず、コミュニケーションのコンセプトとして"重力に抗う"というキーワードを開発しました。「C6」の乗り心地を表すコトバ。ど れだけ荷物を積んでも、人が乗っても、シトロエン「C6」の車体は沈まない。なぜなら、独自の油圧サスペンションが備わっているから。そして、独自の価値 観を守るためには決して長いものには巻かれないフランス人の思想や哲学が持つ"抗う気質"をも包括したクリエイティブを創っていきました。

ビジュアルとコピーで「C6」のオリジナリティを訴求
  そこから生まれたビジュアルアイデアが「タイヤのないクルマ」。重力に抗うかのような優れた乗り心地を瞬時に視覚伝達し、思わず "乗ってみたい"と感じ させるコミュニケーションが施された。また、メインビジュアルの背景には、ブラジルの有名な建築家であるオスカー・ニーマイヤーの建造物が配されている 。

今井氏:ニーマイヤーが設計した建築物はどれも斬新で、既成概念にとらわれないものばかり。ブラジルの首都ブラジリアの近代都市をはじめとする数々の実 績や、それに伴うイメージを含めて彼の建造物を背景に配置することで、タイヤのない重力に抗う「C6」との相乗効果が生まれ、シトロエンの独創性をインパ クトあるカタチでより一層アピールできるんじゃないか、と。当社のアートディレクター後藤純が最後の最後まで、いろいろ試行錯誤し「C6」独自の世界観を 表現したビジュアルを創り上げてくれました。メインコピーは「異次元へ。」。シトロエンの独創性や既成概念にとらわれないといった他のブランドとは明確に異なる部分をいかに伝えるか、をテーマに 開発されたもの。

今井氏:そのしなやかな乗り心地は、ドライバーや同乗者を全く異なる次元へ連れてってくれる、誘ってくれる。そこから当社のコピーライター坂本陽児が「 異次元へ。」という強烈にインパクトのあるコトバを導き出してくれました。クルマの広告によくある機能性を前面に押し出した説明調のコピーとは一線を画 し、その点でもフランス的な"抗う気質"が内包されていると思います。

Webサイトで、より幅広い層にブランド認知を促す
 スペシャルサイトでは、「C6」の様々な個性をインタラクションによって説明するとともに、4人の著名人による動画コンテンツ「Driver's Impressions」を 用意。配信動画は、メールによるシェアが可能で、バイラルへの取り組みも考慮されている。

今井氏:Webサイトで重要視したのは、「C6」の乗り心地を信憑性のあるカタチで著名人に語ってもらうこと。様々な職種の4人の方に出演しただき、「C6」の メインターゲット層はもちろん、「C3」「C4」のターゲットである30〜40歳代の人たちにいかに「C6」を通じてシトロエンというブランドを認知してもらうか ということを考えました。Webは、より幅広くコミュニケーションするための媒体として機能させています。「C6」をキッカケに「C2〜C5の他モデル」の購買に つなげる導線。その意味でも「C6」はまさにフラッグシップモデルです。また、「C6」のキャンペーンサイトでは、DMを映像化したようなデザインを目指しま した。それらを含めて、きちんとシトロエンを代表するにふさわしいエレガントな格好良さに落とし込んだWebサイトのアートディレクションは、当社の鈴木大 栄のシゴトです。

今井氏によるプレゼンテーション初期のデザインスケッチ
 自動車広告としては類を見ない「タイヤのないクルマ」が登場する「C6」のキャンペーン。このビジュアルに決定するまでには、紆余曲折があったという。 <クライアントからは、”やはりタイヤは付けた状態で表現するべき”という意見も出ましたが、話し合いを重ねて、最終的にGOサインに至りました>と宇 田川氏。 また、今井氏は<「C6」は十数年ぶりのフラッグシップモデル。消費者が思わず立ち止まって考えるような広告を打たないと効果は小さいと考えました。広 告を目にして一瞬「?」と感じる。それを表現に落とし込んだ結果が「タイヤのないクルマ」。今回のキャンペーンの軸である、「独特な油圧サスペンション による優れた乗り心地」はシトロエンだからこそ描けるポイント。他のブランドにはできない。そういったシトロエンならではの資産を活用しない手はないで すよね>と話す。

「広告で感じること」の重要性/アイデアに満ちた広告表現を
宇田川氏:「C6」は、2006〜2007年のインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことから、クルマ雑誌などを中心に同車種についてはすでに多く語られ ていたので、それを広告でもう一度なぞってもあまり意味がない。だからこそ、シトロエンが持つ他者とは全く違う思想や哲学をしっかり訴求していくことが 大切だと考えました。

今井氏:日々広告を企画制作していくときに念頭におくのは、消費者は広告手法やコミュニケーション論などをいちいち考えながら見ていないということ。作 り手が、いろいろな理論や手法を駆使しても、消費者はそこに反応するわけではありません。もっとシンプルにストレートに「見ている」。そこは常に意識し 続けているところ。例えば広告にWebサイトに誘引するためのURLを大きく載せたり、CMで検索窓を付けたりするものが急増していますが、載せたからといって 見た人が必ずしもそのURLをブラウザに打ち込んでくれるわけではないですよね。それよりも広告そのものに「面白い」「気になる」といった感覚を消費者の脳 裏に焼きつけることができれば、その人たちがたまたまWebに接触した際に、何かのキッカケでその広告を思い出し、サイトにアクセスして情報を得るようにな ると考えます。ここで僕が言いたいのは「消費者の行動に対して過度な期待をしないこと」。そpして、このようなシビアな消費者の心を少しでも振り向かせ られるような広告とはどんなものが?ということを熟考した結果、今回の「C6」キャンペーンでは、”違和感”を感じて思わず立ち止まってしまうような独創 的な表現が実現したのだと思っています。

新ブランドスローガン「すべてが芸術」
新しいブランドスローガンは「すべてが芸術」。硬質なイメージの自動車産業の中にあって、”芸術”という響きがシトロエンの異彩を際立たせている。<シ トロエンの根底には「Art de vivre」という感覚が根付いています。日常生活のあらゆるものをアートで彩るフランス気質に起因した概念。精神的に満たされ ようとするフランスの生活信条、その上で製造・開発されているシトロエンのクルマたち。日本語の「芸術」というコトバの使い方を思案しましたが、シトロ エンが創り出すものはすべて芸術的だという本質をシンプルに伝えていくものです>と今井氏。

◆シトロエン・ジャポン
 http://www.citroen.co.jp/
credits:
広告会社/ビーコン コミュニケーションズ CD+PL/今井康仁 AD/後藤純、松原康雄 C/坂本陽児 D/川口貴弘(タックデザイン) CG dir/上見佳史(amana) CG pr/森洋平(amana) 広告会社/ビーコン コミュニケーションズ 制作会社/フォーム・プロセス CD+PL/今井康仁 C/坂本陽児 AD/鈴木大栄 WEB dir/八木崇晶 D/栗原圭吾(フォーム・プロセス) MOVIE/鶴林克輝 agpr/久保田留実 edit/塩治友季子